今年(2012年)創立15周年を迎えた長岡京室内アンサンブルの第6弾は、林光の新作「3つの映画音楽」(長岡京室内アンサンブル、東京・春・音楽祭共同委嘱作品)とヴィヴァルディの「四季」のカプリングです。音楽監督の森悠子は、1970年代の初頭に留学先のパリで台詞のまったくない映画「裸の島」を見て感動、それが今回の委嘱のきっかけとなりました。映画「裸の島」(新藤兼人監督 1960年)に加えて、「真田風雲録」(加藤泰監督1963年)と「秋津温泉」(吉田喜重監督 1962年)の3作品で組曲の形にしているのは、武満 徹が最晩年に作曲した「3つの映画音楽」にならってのものです。初演は2011年4月9日の「東京・春・音楽祭」(東京文化会館小ホール)ですが、このCDの収録は4月12日に長岡京記念文化会館で行われました。1930年生まれの武満徹は「音楽家の中で一番尊敬しているのは林光さん」と述べ、1931年生まれの林光は「武満徹は私のプライベート・フレンド」という仲の良いふたりでした。奇しくも仲の良かった2人は、「3つの映画音楽」の作曲の翌年に亡くなりました。 2003年1月、長岡京室内アンサンブルは、フランスのナント市のラ・フォル・ジュルネに日本の団体として初めてルネ・マルタンから招かれ「四季」「海の嵐」など3つのプログラムで望みました。その年はイタリアン・バロック(モンテヴェルディからヴィヴァルディへ)がテーマ、ラ・フォル・ジュルネの特色のひとつは同じ曲の競演で、「四季」はビオンディ&エウローパ・ガランテ、アレッサンドリーニ&コンチェルト・イタリアーノやシンフォニア・ヴァルソヴィア(サバ指揮)など計6団体の競演となりました。 「四季」のディスクを300枚も集めているコレクターの男性から「新しい『四季』の誕生おめでとう。景色が見えるような『四季』だった」と長岡京の演奏に大きな賛辞が寄せられ、主宰のマルタン氏の評価も「モダン楽器なのにバロックのエネルギーを感じさせてくれる」ときわめて高いものでした。 「四季」はソネットと呼ばれる詩に沿って音楽が進行しますが、その描き方には様々な可能性があります。その可能性にナント以後も長岡京室内アンサンブルは独自の感性で挑みつづけました。ナントから9年、さらに「創意の試み」溢れる「四季」がここに誕生しました。「裸の島」に寄せる思い私が留学した1970年代初頭のパリでは、日本映画が盛んに上映され ており、10年遅れで初めてパリで見た「裸の島」に涙しました。台詞がひと言もなく、瀬戸内海のやせた孤島を開墾する夫婦と2人の子供たちの物語ですが、背景のメロディが映像と共に心に深く焼きつき ました。いつの日か、弦楽合奏で演奏したいとの強い思いがありましたが、時を経て、林光先生自らの編曲で叶いました。 森 悠子***************************台詞のまったくない映画「裸の島」に付けられた音楽を、私は日本映画音楽のベスト1に挙げることを躊躇しない 大原哲夫発売日:2012.5.11
林 光3つの映画音楽1. 裸の島のテーマ~「裸の島」より2. 下克上の歌 ~「真田風雲録」より3. ラストシーン・新子の死~「秋津温泉」よりヴィヴァルディ協奏曲集「和声と創意への試み」作品8より 《四季》長岡京室内アンサンブル(音楽監督:森悠子)「四季」のソロ・ヴァイオリン: 春=谷本華子、夏=高木和弘、秋=青谷友香里、冬=舘野ヤンネ録音: 長岡京記念文化会館 2011年4月12日
今年(2012年)創立15周年を迎えた長岡京室内アンサンブルの第6弾は、林光の新作「3つの映画音楽」(長岡京室内アンサンブル、東京・春・音楽祭共同委嘱作品)とヴィヴァルディの「四季」のカプリングです。
トラックリスト音楽監督の森悠子は、1970年代の初頭に留学先のパリで台詞のまったくない映画「裸の島」を見て感動、それが今回の委嘱のきっかけとなりました。映画「裸の島」(新藤兼人監督 1960年)に加えて、「真田風雲録」(加藤泰監督1963年)と「秋津温泉」(吉田喜重監督 1962年)の3作品で組曲の形にしているのは、武満 徹が最晩年に作曲した「3つの映画音楽」にならってのものです。
初演は2011年4月9日の「東京・春・音楽祭」(東京文化会館小ホール)ですが、このCDの収録は4月12日に長岡京記念文化会館で行われました。
1930年生まれの武満徹は「音楽家の中で一番尊敬しているのは林光さん」と述べ、1931年生まれの林光は「武満徹は私のプライベート・フレンド」という仲の良いふたりでした。
奇しくも仲の良かった2人は、「3つの映画音楽」の作曲の翌年に亡くなりました。
2003年1月、長岡京室内アンサンブルは、フランスのナント市のラ・フォル・ジュルネに日本の団体として初めてルネ・マルタンから招かれ「四季」「海の嵐」など3つのプログラムで望みました。その年はイタリアン・バロック(モンテヴェルディからヴィヴァルディへ)がテーマ、ラ・フォル・ジュルネの特色のひとつは同じ曲の競演で、「四季」はビオンディ&エウローパ・ガランテ、アレッサンドリーニ&コンチェルト・イタリアーノやシンフォニア・ヴァルソヴィア(サバ指揮)など計6団体の競演となりました。
「四季」のディスクを300枚も集めているコレクターの男性から「新しい『四季』の誕生おめでとう。景色が見えるような『四季』だった」と長岡京の演奏に大きな賛辞が寄せられ、主宰のマルタン氏の評価も「モダン楽器なのにバロックのエネルギーを感じさせてくれる」ときわめて高いものでした。
「四季」はソネットと呼ばれる詩に沿って音楽が進行しますが、その描き方には様々な可能性があります。その可能性にナント以後も長岡京室内アンサンブルは独自の感性で挑みつづけました。
ナントから9年、さらに「創意の試み」溢れる「四季」がここに誕生しました。
「裸の島」に寄せる思い
私が留学した1970年代初頭のパリでは、日本映画が盛んに上映され ており、10年遅れで初めてパリで見た「裸の島」に涙しました。
台詞がひと言もなく、瀬戸内海のやせた孤島を開墾する夫婦と2人の子供たちの物語ですが、背景のメロディが映像と共に心に深く焼きつき ました。いつの日か、弦楽合奏で演奏したいとの強い思いがありましたが、時を経て、林光先生自らの編曲で叶いました。
森 悠子
***************************
台詞のまったくない映画「裸の島」に付けられた音楽を、
私は日本映画音楽のベスト1に挙げることを躊躇しない
大原哲夫
発売日:2012.5.11
林 光
3つの映画音楽
1. 裸の島のテーマ~「裸の島」より
2. 下克上の歌 ~「真田風雲録」より
3. ラストシーン・新子の死~「秋津温泉」より
ヴィヴァルディ
協奏曲集「和声と創意への試み」作品8より 《四季》
長岡京室内アンサンブル(音楽監督:森悠子)
「四季」のソロ・ヴァイオリン:
春=谷本華子、夏=高木和弘、秋=青谷友香里、冬=舘野ヤンネ
録音: 長岡京記念文化会館 2011年4月12日