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早坂文雄の軌跡

価格(税込): ¥3,630

レーベル: SALIDA(JPN)
品番: DESL-019
発売日: 2023/08/16
フォーマット: 1CD

作曲家 早坂文雄が手掛けた、黒澤明 監督作品『羅生門』、日本戦後アニメーションの重要作『ムクの木の話』への仕事と日本の戦後音楽に多大な影響を与えた《交響的組曲「ユーカラ」》
大友直人指揮の東京交響楽団による歴史的名演を初CD化!

東京交響楽団公演「現代日本音楽の夕べシリーズ 第18回 早坂文雄 没後60年コンサート」。
作曲家 早坂文雄の没後60年にあたる2015年10月に開催された本公演では、黒澤明監督作品『羅生門』の映画音楽《真砂の証言の場面のボレロ》をはじめ、《交響的童話「ムクの木の話し」》、《交響的組曲「ユーカラ」》、これらの早坂文雄が遺した重要な作品が演奏されました。

2022年にSalidaが制作したCD『早坂文雄と芥川也寸志の対話』。
これまで限られた資料を頼りに検証が重ねられてきた早坂文雄の肉声録音を世界初CD化した『早坂文雄と芥川也寸志の対話』にたいする凄まじい反響から、「作曲家 早坂文雄」への関心の高まりを確信したSalidaは、肉声録音に続き、早坂文雄の音楽作品をかたちにすべく、「早坂文雄 没後60年コンサート」のCD化を立案。

Salida制作CD『小杉太一郎 作曲 石島恒夫 作詩 カンタータ 大いなる故郷石巻』、『小杉太一郎の純音楽』、『山内正の純音楽』制作でその演奏をCD化する御縁をいただいてきた東京交響楽団の真摯な御対応のおかげで、開催から10年近く経過した「早坂文雄 没後60年コンサート」記録音源が発見に至りました。

映画『酔いどれ天使』を皮切りに『野良犬』、『生きる』、『七人の侍』、『生きものの記録』等々の作品で日本映画に一石を投じた伝説的コンビとして知られる黒澤明監督と作曲家 早坂文雄。
中でも 『羅生門』(1950)は、第12回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞するなど、黒澤明と早坂文雄の名を一躍世界に知らしめると同時に戦後日本映画作品に国際的名声を与えました。
本編で、多襄丸(三船敏郎)によって自分は暴行されたと主張する真砂(京マチ子)が、次第に陶酔感に溺れ高揚していくシーンにたいして、黒澤明監督は「ラヴェルの《ボレロ》のような音楽」を要求し、早坂文雄は《真砂の証言の場面のボレロ》の作曲によって、このむずかしい試みに応えます。

セル・アニメーションと実写の結合による独自な表現を用いた“造形技術映画”『ムクの木の話』(製作:東宝教育映画部)。
戦後間もない1947年に公開された本作のストーリーは―――ムクの木が幾年も立ち続ける荒野に冬の悪魔「氷魔」が現れ、凍りついた死の世界に一変させてしまうも、女神が姿を現し、その力によって氷魔もろとも世界を氷解させ、荒野に春がおとずれる―――というシンプルなものながら、戦争による抑圧への怒り、そしてその統制からの解放を表現する意図を内包しています。
セリフ・効果音がいっさい無く、音楽がそれらに代わる音響的演出を行いながら映像と共に物語を展開していく本作を、早坂文雄は自身の音楽語法を総動員した音色的創意に富むサウンドで彩りました。映画音楽の仕事で培われた早坂文雄の直感とオーケストレーション技術の妙味を存分に味わうことが出来ます。
映像の時間・動きと密接な関係を持ちつつも、音楽そのものの統一的な流れも考慮して構成を形作り、数多くのバレエ音楽がそうであるように視覚が伴わないかたちでも存立し得る音楽作品を志して、早坂文雄が本作の音楽スコア表紙に書き込んだそのタイトルは―――《交響的童話「ムクの木の話し」》。

早坂文雄が、その短い生涯の晩年にあたる1950年代に自らの創作態度について主張した『汎東洋主義(パンエイシャニズム)』。
「単純性」「無限性」「非合理性」「植物的感性」「平面性」の5つに要約される日本的特性と二十世紀の音楽様式との結合を足掛かりとして、東洋音楽の新しい様式を考えなければならないとする『汎東洋主義』の探求過程で《交響的組曲「ユーカラ」》は作曲されました。
金田一京助『アイヌ叙事詩 ユーカラ』(岩波文庫)を題材に同書より選んだ五篇に序奏をつけ、「交響的組曲」としてまとめられた本作は、それまでの早坂作品とは一線を画する音楽語法が用いられており、早坂文雄の新しい境地を示す作品として知られています。
《交響的組曲「ユーカラ」》の初演は、日本の音楽家、中でも早坂文雄と親しく交流のあった総合芸術グループ「実験工房」メンバーの佐藤慶次郎、鈴木博義、武満徹、湯浅譲二らに多大な影響を与えました。『汎東洋主義』に基づくその創作コンセプトは、「実験工房」後も各人各様に発展継承され、やがて日本の戦後音楽のひとつの極まりを形成するに至ります。

早坂文雄の純音楽作品の遺作となった《交響的組曲「ユーカラ」》は、日本音楽史上における重要作ながら、これまでその演奏が音盤化されたのは、たった一つのコンサート録音のみという不当な状態にありました。
本企画では、この状況を打破すべく、指揮者 大友直人氏より御快諾をいただいたうえで、かつて《交響的組曲「ユーカラ」》を委嘱・初演した東京交響楽団によるすばらしい演奏音源のCD化を実現。

「作曲家 早坂文雄」を今一度見つめ直す必聴盤の誕生です。


★ 日本を代表する指揮者・オーケストラによる名演を収録

「現代日本音楽の夕べシリーズ 第18回 早坂文雄 没後60年コンサート」の指揮をつとめたのは、現在、東京交響楽団名誉客演指揮者、京都市交響楽団桂冠指揮者、琉球交響楽団音楽監督、高崎芸術劇場芸術監督をつとめ、日本の音楽界をリードし続けている指揮者 大友直人。
演奏は、サントリーホール、ミューザ川崎シンフォニーホール、東京オペラシティコンサートホールで主催公演を行い、文部大臣賞を含む日本の主要な音楽賞の殆どを受賞している東京交響楽団。
日本を代表する指揮者・オーケストラによる名演を収録した貴重盤です。


★ 貴重音源をハイクオリティサウンドでCD化

東京交響楽団より提供された貴重な「現代日本音楽の夕べシリーズ 第18回 早坂文雄 没後60年コンサート」記録音源を、より豊かな響きで記録するため、マスタリングをソニー・ミュージックスタジオのチーフエンジニア 鈴木浩二氏にお願いし、繊細かつエネルギッシュなハイクオリティサウンドでのCD化を実現しました。


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● 早坂文雄 (1914-1955)

1914年、宮城県仙台市に生まれる。
1918年、北海道札幌市に一家で移住。少年期より美術と音楽を愛し、旧制北海中学校在学時よりオルガンやピアノをはじめる。ほどなく独学で作曲の習作にも取り組む。

1934年、伊福部昭(後の作曲家)、三浦淳史(後の音楽評論家)と共に「新音楽連盟」を結成。「国際現代音楽祭1934」を主催し、自身のピアノによりエリック・サティ《三つのグノシエンヌ》などの日本初演を行う。
1935年、札幌「山鼻カトリック教会」に居住し、専属オルガニストとしての生活を送る。神学やグレゴリオ聖歌の研究をしながら、ラテン語、ギリシャ語、ドイツ語を独学する。

1936年、《二つの讃歌への前奏曲》が日本放送日本的祭典曲懸賞募集〈第2位入選〉。山田耕筰 指揮 日本放送交響楽団(当時、楽団名を「新交響楽団」としていた現在のNHK交響楽団が放送番組出演時に使用した名称)により放送初演される。

《古代の舞曲》(1937)がワインガルトナー賞〈優等賞〉受賞。
1939年、東宝映画社長 植村泰二の勧めに応じ、東宝音楽部に入社することを決意。同年、映画音楽第1作となる『リボンを結ぶ夫人』(監督:山本薩夫)を担当する。

《序曲 二調》(1939)が日本放送協会皇紀2600年奉祝管絃楽曲懸賞〈第1位入賞〉。

1946年、映画『民衆の敵』(監督:今井正)の音楽で第1回毎日映画コンクール音楽賞を受賞。以後、1947年『女優』(監督:衣笠貞之助)、1948年『酔いどれ天使』(監督:黒澤明)『虹を抱く処女』(監督:佐伯清)『富士山頂』(監督:佐伯清)、1949年『野良犬』(監督:黒澤明)の仕事で同賞を連続4回受賞する。

溝口健二監督作品『雨月物語』『山椒大夫』『近松物語』『楊貴妃』『新・平家物語』、黒澤明監督作品『醜聞』『羅生門』『白痴』『生きる』『七人の侍』『生きものの記録』などに代表される、それまでの映像附随音楽の水準を超える水際立った仕事は、日本における「映画音楽」の向上に深く寄与した。

映画音楽の仕事と並行して《左方の舞と右方の舞》(1942)、《ピアノ協奏曲》(1948)などのオーケストラ作品を発表。

新しい作曲運動のためのグループ「新作曲派協会」の発足に清瀬保二、松平頼則らと参画。1947年に開催された新作曲派協会第1回発表会でピアノ曲《詩曲》が初演される。以後、同発表会で数々の室内楽作品を発表する。

1955年10月15日、肺気腫(突発性肺気胸)により41歳の若さで急逝。

「自分自身が東洋的感性そのものになりきらなければ作品は書けない」とする、自身が唱えた「汎東洋主義(パンエイシャニズム)」探究の過渡的傑作《交響的組曲「ユーカラ」》(1955)が純音楽作品の遺作となった。



● 大友直人 (指揮)

桐朋学園大学在学中にNHK交響楽団を指揮してデビュー以来、日本の音楽界をリードし続けている。

これまでに日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者、大阪フィルハーモニー交響楽団専属指揮者、東京交響楽団常任指揮者、京都市交響楽団常任指揮者、群馬交響楽団音楽監督を歴任。現在は東京交響楽団名誉客演指揮者、京都市交響楽団桂冠指揮者、琉球交響楽団音楽監督、高崎芸術劇場芸術監督。

東京文化会館の初代音楽監督として東京音楽コンクールの基盤を築いたほか、海外オーケストラからも度々招かれており、ハワイ交響楽団には20年以上にわたり定期的に招かれている。

小澤征爾、森正、秋山和慶、尾高忠明、岡部守弘らに学ぶ。NHK交響楽団指揮研究員時代にはW.サヴァリッシュ、G.ヴァント、F.ライトナー、H.ブロムシュテット、H.シュタインらに学び、タングルウッド・ミュージックセンターではL.バーンスタイン、A.プレヴィン、I.マルケヴィチからも指導を受けた。

大阪芸術大学教授。京都市立芸術大学、洗足学園大学各客員教授。



● 東京交響楽団

1946年、東宝交響楽団として創立。1951年に改称し現在に至る。サントリーホール、ミューザ川崎シンフォニーホール、東京オペラシティコンサートホールで主催公演を行い、文部大臣賞を含む日本の主要な音楽賞の殆どを受賞。新国立劇場のレギュラーオーケストラを務めるほか、川崎市や新潟市など行政と提携した演奏会やアウトリーチ、「こども定期演奏会」「0歳からのオーケストラ」等教育プログラム、ウィーン楽友協会をはじめとする海外公演も注目されている。さらに日本のオーケストラとして初の音楽・動画配信サブスクリプションサービスや、VRオーケストラ、電子チケットの導入などITへの取組みも音楽界をリードしており、2020年ニコニコ生放送でライブ配信した無観客演奏会は約20万人が視聴、2022年12月には史上最多45カメラによる《第九》公演を配信し注目を集めた。

近年は、音楽監督ジョナサン・ノットとともに日本のオーケストラ界を牽引する存在として注目を集め、《サロメ(演奏会形式)》は音楽の友誌「コンサート・ベストテン2022」で日本のオーケストラとして最高位に選出された。

https://tokyosymphony.jp/

トラックリスト

(1)映画『羅生門』から《真砂の証言の場面のボレロ》(1950) [9:13]

(2)交響的童話「ムクの木の話し」(1946) [20:54]

交響的組曲「ユーカラ」(1955)
(3) プロローグ [4:56]
(4) ハンロッカ [6:11]
(5) サンタトリパイナ [6:20]
(6) ハンチキキー [7:34]
(7) ノーペー [12:09]
(8) ケネペツイツイ [9:49]

指揮:大友直人 東京交響楽団
録音:2015年10月10日 ミューザ川崎シンフォニーホール
現代日本音楽の夕べシリーズ 第18回 早坂文雄 没後60年コンサート
※ 〔音源提供:東京交響楽団〕